2023/09/26
★さまざまな原因による下痢
一口に下痢と言っても様々な原因があります。その症状や原因により治療も変わってきます。まずは原因の除去と原発疾患の治療、対症療法として輸液や整腸剤・止瀉剤の使用などがあげられます。
《 腸炎の原因 》
➀小腸の急性腸炎
細菌・ウィルス・寄生虫感染が原因のことが多いです。駆虫をはじめ抗菌剤の使用と整腸剤などが処方されます。
➁炎症性腸炎(IBM)
炎症細胞がびまん性に浸潤して慢性腸炎をおこします。食餌療法・対症療法で反応せず、抗炎症剤の使用で改善がみられることが多いです。
➂リンパ管拡張症
リンパ管の異常拡張により、蛋白漏出をおこす慢性腸炎です。他臓器疾患からも起こりうるので区別が必要です。
➃急性・慢性大腸炎
食餌性・寄生虫性の原因であることが多いので、稟告・身体検査・検便などから診断的治療が行われることが多いです。
⑤膵臓・肝臓をはじめ他臓器疾患が原因の2次的な腸炎
まず原発疾患の治療が必要で、次いで対症療法を取る事になります。
⑥アレルギー性腸炎
食餌などをはじめアレルギーにより下痢症状を示します。
⑦ストレスなど原因不明の腸炎
★子犬・子猫や若いペットに多い下痢や嘔吐
①幼犬・幼猫の時は食べすぎや消化不良で下痢を起こすこともあります。食欲があるようでしたら、絶食はせずに量を控え目にして整腸剤などで様子を見るのも良いでしょう。ただし、嘔吐がみられたり食欲が落ちたり、また下痢が何日も続くようでしたら早めに動物病院に受診しましょう。抵抗力のない幼犬・幼猫では食餌が何日も取れないと、低血糖を起こしたり衰弱してしまう恐れもあります。
②下痢の原因の一つには腸内寄生虫があげられます。回虫・鉤虫・条虫や原虫など、寄生虫によって駆虫薬が異なってきますので、検便で寄生虫卵を検出したり実際排泄された寄生虫に合ったお薬を処方してもらいましょう。また子犬・子猫の時には一般的な回虫などの虫下しを見込み的にしておくのも良いでしょう。検便も兼ねて動物病院にそうだんしましょう。
③ワクチンは接種してらっしゃいますか?幼犬・幼猫は親から病気に対する免疫はもらっていますが一生モノではありません。生後数週間から徐々に免疫力は落ちていってしまうので、その頃何度かに分けてワクチン接種をして人工的に免疫をつけてあげなければなりません。パルボウィルスやコロナウィルスなど胃腸炎を起こすウィルスもあるので、免疫をつけるために計画的にワクチン接種をしましょう。
④いたずら盛りの若いペットではお家の中での誤食による事故が間々見られます。人の食べ物を盗食して食べすぎたり、ネギ類やチョコレートや毒性のある観葉植物を食べて中毒症状を起こす場合もあります。下痢や嘔吐、神経症状を起こしているペットに誤食の疑いがある時はすぐに動物病院に連絡して指示を仰ぎましょう。またおもちゃやひもなど遊んでいて間違って飲み込んでしまうような事故も時々見られます。気が付かないでいつまでも胃の中にあって吐き気の原因になったり、最悪腸に詰まって腸閉塞を起こし命に関わる場合も出てきます。ペットの誤食に最大限にご注意ください。
★中高年のペットに多い消化器症状
①季節の変わり目や真夏・真冬など、気候により一時的な胃腸炎を起こす場合もあります。食欲があるなら消化の良いフードに代えて整腸剤・止瀉剤で様子を見ても良いでしょう。子犬・子猫と同様に、嘔吐や食欲不振がみられたり下痢が数日続く時は、やはり動物病院に受診しましょう。消化器のみの問題でない場合もあるので、色々な検査が必要になってくるかもしれません。
また原因不明の疾患で出血性大腸炎と呼ばれる、急に嘔吐・下痢・血便等がみられる病気も時にみられます。血便が見られても慌てずにすぐに動物病院に相談しましょう。
②中高年のペットが長期に下痢・嘔吐や食欲不振があったり痩せてきたなどといったら、これはもう重篤な内臓の病気の疑いがあるので、動物病院で便検査を始め血液検査やレントゲン検査・超音波検査などを受ける必要があります。腎臓病・肝臓疾患・膵炎など内臓疾患や糖尿病などの内分泌疾患、また原因の分かりにくい慢性炎症性腸症や腸の癌・リンパ腫など原因は様々です。まずは原因追究が治療の第一歩となります。