2024/04/21
春の予防期間なので愛犬の来院が多い中、ある元飼主さんからお電話があり来院されました。道で生まれたばかりの仔猫を拾ってしまったと…。本当に今日の今生まれたばかりらしく生々しい胎盤が着いたままの仔猫で、その方が拾った際周囲を見回しても親猫はいなかったそうです。いったいどんな状況なのか?そんな時でも仔猫は思いのほか汚れておらず元気だったそうです。
もう亡くなってはいますがもともと猫の飼主さんであったその方は、難しいのは百も承知の上で哺育にチャレンジしてみるとおっしゃっていました。取り敢えずへその緒の処理だけしてもらえないかと、数時間預かることになりました。
まずは保温してへその緒の処理をして消毒します。マッサージをして呼吸を促し刺激して排尿をさせます、すると割と元気に鳴き声をあげて体をよじります。これでミルクを飲んでくれたならもしかして生き延びるかも?まだ初乳も飲んではいないのでは?と思われ、当然哺乳瓶からは全く飲めません。スポイトで少しずつ口に含ませていくと、何度目かの哺乳時には自ら吸う動作を始めました。ここで飼主さんにバトンタッチです。お家で何度も試していただいて哺乳瓶から飲めるようになればもしかしたらもしかして…。もちろん本当の困難はこれからです。しかし、あんな状況でも生きようとする仔猫が、哺育に挑戦しようとされる人に拾われたという幸運に、もしかしたら奇跡のようなチャンスが訪れるのではと思っています。
夜になって雨が降り出し気温がぐっと下がりました。もしあのままこの冷たい雨に打たれていたら、Sちゃん(来院時仔猫にはもう名前が付けられていました)の小さな灯はとうに消えていたでしょう。たくさんの不幸なノラ猫がいる中で、砂漠の中の砂金のようなSちゃんの幸運にシンシアはとても慰められました。ありがとう。